• 「脳卒中対策基本法」推進の現状

    癌は病気の中でも死亡率が第一位、多数の国民の生命と生活を脅かしている最大の疾患です。これに対して「がん対策基本法」が2006年に制定されて大きな成果が得られています。

    「脳卒中対策基本法」はこれに倣って脳卒中を克服するための法律です。
    脳卒中も膨大な数の国民が罹患し、死亡率が高いだけでなく、後遺症による要介護者数は総ての病気の中で最大、全体の1/3です。一人の要介護者に対して家族などが多大の犠牲を払っている事も多く、社会が受ける被害は重大です。
    一方、脳卒中医療の大きな進歩によって、国を挙げて集中的、計画的な対策を取れば、抜本的な成果が得られる事も分かっています。
    このため、多くの病気の中からこの脳卒中だけを特に取り上げて、集中的、組織的な対策を取ろうというのが「脳卒中対策基本法」の趣旨です。

     2009年には、脳卒中対策立法化推進協議会が出来て、推進活動を始めました。
    2011年2月には、国会に超党派の「脳卒中対策推進議員連盟」(田中慶秋会長)が結成されましたが、直後の東日本大震災のため作業が停滞。その後の選挙で主要メンバーが落選して自然消滅しました。
    その後2013年末に自民、公明両党の「脳卒中対策を考える会」(尾辻秀久会長)が発足し、昨年6月に参議院に「脳卒中対策基本法案」を提出しましたが、年末の衆議院解散で審議未了、廃案になりました。

     ところが今年に入って突然、「脳卒中対策基本法」は止めにして、「循環器病対策基本法」推進に方向転換する動きが進んでいます。脳卒中は脳血管の病気で、脳血管は循環器だからと云う事です。
    然し、循環器病には心臓病、末梢動脈疾患、肺塞栓症など多種多様な病気が含まれ、そこまで広げてしまっては脳卒中に対して集中的、組織的な対策が十分取れなくなってしまいます。重大な事態になったと言わねばなりません。

     ここでは、この問題について「日本脳卒中者友の会」が5月末に表明した意見を掲載します。この会は全国規模の脳卒中患者団体としては唯一つの団体で、脳卒中対策立法化推進協議会の構成団体です。推進協議会は2つの患者団体と、主として医療提供者から成る12の団体の合計14団体から成っています。もう一つの患者団体は失語症患者の団体で、推進協議会の脳卒中患者団体は「日本脳卒中者友の会」唯一つです。

    2015-07-01