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2017年11月29日



脳卒中「法整備 前進を」 横浜の上野さんら活動


基本法制定の重要性を訴えている上野さん。
(左)は事務局の沼里ゆり子さん=横浜市泉区で  
脳出血や脳梗塞などの患者でつくるNPO法人「日本脳卒中者友の会」(熊本市西区)が、脳卒中の治療体制の充実や一般への理解を深めるための法整備を国に求めている。
二〇〇九年に運動を始め法制化の一歩手前まで来たが、現在は動きが停滞。
同会は法整備の重要性をアピールしようと、全国各地で講演会を開いている。 (志村彰太)

 脳卒中は発症直後の急性期から回復期、リハビリまで切れ目のない治療が必要で、発症に気付くのは周囲の場合が多い。
友の会顧問で、「脳卒中から助かる会」代表の上野正さん(86)=横浜市中区=は「病院内の連携体制の確立と、一般への啓発を盛り込んだ『脳卒中対策基本法』が必要だ」と語る。
上野さんも〇一年に脳梗塞になり入院。今も右手にしびれが残る。
 上野さんらの運動により、地元・横浜市が医療行政を見直した。〇九年、脳血管の血栓を溶かす薬剤「t-PA」について、市内各病院の使用実績と患者の経過を公表するようになった。
t-PAは効果が高い薬とされるものの副作用で脳出血になる懸念があり、扱いが難しい。
このため実績の公開は「治療レベルの向上に不可欠」(上野さん)だった。  
一方で政治家や国の動きは鈍い。一一年二月、基本法成立に向けた超党派の議連が発足するも、翌月の東日本大震災などを経て自然消滅。
一四年に議員提出された脳卒中対策基本法案は、衆院解散に伴い廃案になった。
その後、「なぜ脳卒中だけ優遇するか」との声が一部の国会議員から上がり、心臓などの疾患も含めた「循環器病対策基本法案」に名前が変わった。
上野さんは「範囲を広げたせいで内容がぼやけてしまった」と指摘する。
 国レベルのt-PAの使用実績公表も「治療体制を評価する何らかの指標は必要だが、公表は検討していない」(厚生労働省がん・疾病対策課)状況にとどまる。
上野さんは「政治家や国の脳卒中への理解不足は続いており、法案の話し合いもなかなか進まない。
粘り強く働きかけて前進させたい」と話した。  

◇ 直近の講演は十二月二日午後二~四時、川崎市総合福祉センター(中原区)で開かれ、専門医が脳卒中の予防や発症後の治療について話す。
参加無料で、定員は当日先着順百五十人。問い合わせは上野さん=電045(621)0398=へ。